
力まずに落ち着いてステージで演奏する方法
どうも、アレクサンダーテクニーク教師の山口裕介 USKです。
先日のレッスンに社会人の吹奏楽団に参加されているトロンボーン奏者の方が来てくださいました。
今回の相談は、
「もっと力まずに落ち着いて演奏したい。人前だと緊張して余計に力んでしまってる気がします。練習の時からも力みを感じるので緊張だけが問題ではないのかもしれないと思ってます。」
力みと緊張はそれぞれ別の理由から起きていることかもしれないので、ひとまず演奏する様子を見せてもらうことからスタートしてみました。
今回のポイントはこの2点です。
①楽器の構え方に無理があるのをやめる
②聞いてもらおうと演奏するのはやめる
では①から見ていきましょう!
楽器を構える瞬間に力むキッカケが見えてきた。
トロンボーンの構え方についてはどう考えてるんですかと聞いてみると、
「左手でしっかり支えるように、脇を締めるようにと言われてきました。」
なるほど、右手はスライドさせてよく動くし左手が楽器を支えるわけよね。
そこでもう1つ聞いてみることに。
USK「しっかりってどれくらいの力が必要なんですか?」
生徒さん「なんとなくしっかりというか、ギュッと力を入れるくらいであまり深くは考えてませんでしたね。」
というのも、僕が構えるところを見て思ったのは、
・肘から肩にかけての腕(上腕)を固定させようとしている
・力こぶ(上腕二頭筋)がカチッと動かへん感じ
・その影響か左肩が右肩より上がっている。
主に上腕をがっちり止めてるように見えたんですよね。確かに演奏中はそんなに動かせないんやろうけど、そこまで止める必要があるんかな?
そんな話をしてると「たしかに力みを感じるのは左手が多いですね」とのことで、ほんならやり方変えてみましょか!
筋肉を縮めるより伸ばす方を考える
肘を曲げる時に筋肉は次の働きをします。
力こぶの上腕二頭筋→縮む
二の腕側の上腕三頭筋→伸びる
とお互いに反対の作用を同時にすることで筋肉がスムーズに運動できるようになっているんですねー。
理学療法士さんがレッスンに来てくれた時に詳しく逆に教えてもらったんですけどこういうの「拮抗筋」っていうんですって。気になる人は調べてみてね。
僕は詳しいわけじゃないけどこの視点を使ってのアイデアがあります。
「トロンボーンを構える時の左手ですが、二の腕側の筋肉が伸びると思って構えてみてもらえますか?腕の外側を意識するって感じかな」
するとさっきの力こぶギュって感じが減り、胴体にピタッとくっついてた上腕が前に出てきました。小さく前にならえ!をやめて肘が前に出たと言えばいいかな。
それに左肩を上に持ち上げる動きもずいぶんなくなりました。
「かなり吸いやすいし音が出しやすいです。力みもなくなりました」
いやー良かった良かった。左手でしっかり支える、脇を締めるはこれまで思っていたやり方とは違う方法でも達成できるようですね。
どんな言葉も角度を変えてみると、動き方も変わってくるもんですね。
では②へ行きましょう!
お客さんに聞いてもらおうはやめてみる
緊張についてお話をする中で、「お客さんに聞いてもらうからには失敗できませんね」と言われました。
USK「聞いてもらおうがそもそも緊張しません?」
生徒さん「そうなんですよ、失敗できませんからね」
USK「ほなやめましょか」
生徒さん「は?」
まあ何を言いだすんかと思ったのかリアクションが素敵な方でしたので、目がパッチリ開いてくださいまして、言ってる方が気持ちよくなる反応で感謝です。
USK「聞いてもらおうとするのをやめる代わりに、お客さんを自分の方に招待すると思ってやってみません?」
これから演奏しますが、良かったどうぞー。聞きたい分だけ聞いてくださればけっこうです。」
こんな感じ!
聞いてもらおうってある意味、押し付けみたいにも感じるのよね。
音をバンバン飛ばすだけに必死で、お客さんも聞くか聞かないかの選択肢があるわけやん。
聞いてもらおうってのは前のめりで自分のことしか考えてないようで一方通行ですわ。
だから自分の方へ「みんな良かったらどうぞー」って招待する気持ちで演奏すればいいんじゃないかな?
僕はそっちの方が、自分もお客さんも選択肢が与えられてて、お互いに自由なんじゃないかなって思うわけ。
演奏はプレーヤーとお客さんとのコミュケーションなのよね。
と、こんな視点もありまっせと伝えました。
そこで聞いてもらおうモードと、良かったらどうぞーのご招待モードで演奏してもらうと、
生徒さん「全然違いますね。聞いてもらおうはお客さんのこと考えてるようで自分のことしか考えてなかったですね。招待するモードは自分がすごく落ち着いて演奏できました。」
気に入っていただけて良かったですー。良かったらどうぞー。
レッスンも同じことよね。
まとめ
さて力まずに落ち着いて演奏するために今回見えてきたのは、
①楽器の構え方に無理があるのをやめる
普段から構える、演奏する身体の使い方に無理があると、緊張する本番はさらにそこから力を加えてしまい、余計に動きづらくなり疲労しやすいんでしょうね。
今回は構えるについて腕をどう使うか?どのように声をかけていくか?で力みの原因は減りました。
②聞いてもらおうと演奏するのはやめる
緊張するキッカケは、演奏に対しての考え方や思い込みが大きいですね。
今回は聞いてもらおうとしすぎて矢印が自分に向きすぎてしまい緊張することになったわけです。
聞いてもらおうはこの方には緊張を強める考え方なので、「お客さんを招待しよう」と思うことで、余裕が生まれたようです。
緊張する原因は考え方や思い込みだけではないんですよね。
思考だけ変えても、その時はうまくいってもまた繰り返しやすいんです。
身体と思考はお互いに関係し合っているので、一緒に見ていくことで効果抜群!
自分の身体も知って、考え方も知って、始めて根本的な動きが変わっていくんですよー。
2つとも一緒に考えることを意識して音楽を楽しんでいきましょう!!
では今日はこの辺で。
ほなまた。
山口裕介 USK