緊張して脱力できない。音量を出そうとすると腕が痛くなるピアニストとのレッスンより
アレクサンダーテクニーク教師の山口裕介USKです。
今回はピアニストの方とレッスンよりお届けします。
緊張して脱力ができない。
体格のわりにフォルテが出てないと言われるのはそのせいかもしれない。
音量を出そうと意識するので腕が痛くなってきている。
ドラマーでも脱力の話題はよく出ますし、この音量についてのご意見はよくいただいたことがありますね。
これがまたじゃあ腕をもっと使おうとか具体的な策がないままやってると痛めてしまうんですよね。それから痛くならないようにするからまたご意見いただいてしまう・・・。
脱力の方法や、音量の出し方も見ていけますがそれはしません。
「今のできる範囲の中でも、十分に達成できる方法はある」
僕が大事にしてるアレクサンダーテクニークのレッスンでの考えからレッスンを進めさせてもらいました。
音量を出したいなら腕の重みを使う。背中の動きがカギになる!
腕の重みが使えるようにするには、腕だけをぶらんと脱力する。そんなイメージがあるかもしれないけど、背中が大きなカギになります。
理由としてはこの生徒さんの演奏を見させてもらうと、背中の動きがかなり少なく見えました。
具体的に見えたのは、
・首が前に出ている
・顔は下を向いている
・鍵盤をしっかりと見ている。
その方と話をしている時は頭・首・胴体のラインは自然で、ピアノを弾き始めると少しずつ首が傾いて、顔は下を向いて、目がギョロっとした感じになるのね。
これで自分の好きな音が出てたり、疲れとか痛みとかなければそれでいいと思う。ただ今回のようにビシッとご意見を言われて、自分でも解決できないなら、新しい選択肢も探してみるのはいいよね。
だからレッスンに来てくれたんやろうしね。
ついやってしまっているクセとなる動きを理解しよう!
まず「鍵盤を見る」という動きだけ取り出して考えてみました。
「見る」という何気ない動作はいろんな場面で使いますよね。
・ピアノを弾く
・譜面を見る
・パソコンを見る
・キッチンの排水溝を洗う時に中を見る
・焼肉屋で肉が焼けているか確認する
これは眼で見ているわけですが、「見る」という動作につられてやってしまってる動きがあります。
・顔も一緒に近づける
・首もにゅーっと前に出る
・あごから前に出す
・距離を取るためにあごを引く
・みそおち辺りから折り曲げる
・呼吸を止める
どれか思い当たるのありますか?
「ちゃんと~しよう」と大事なものを見るときほど、眼以外の身体も一緒に参加させてしまやすい。
何気なくやり続けてきたなら、クセになって染み付いちゃうね。
この生徒さんは、顔・首が前に出ることでしたので、この動作に新しい選択肢をお渡ししました。
覚えておくと便利!カラダの簡単レシピ
ここでちょっとお勉強。
顔・首が前に出ることで、首回りにある筋肉が縮んでしまいます。パソコンやスマホで肩こり・首こり・眼精疲労などで苦労されてる方は調べてると思うので、聞いたことのある筋肉でしょうね。
背中側にある腕の動きと関係する筋肉について少し見てみましょう。
イラストにあるように首の後ろ、背中側には腕と関連する筋肉がいくつかあります。「こんな風につながってるのね」と眺めるだけでもしてね。
◆僧帽筋(そうぼうきん)
肩こりを引き起こす、猫背の原因!?とも言われる首から背中を覆う大きな筋肉で有名です。肩甲骨を上下に動かしたり、背骨の方に寄せる役割です。
◆肩甲挙筋(けんこうきょきん)
僧帽筋より深いとこにいて、肩甲骨を上げる、首を左右に動かす役割。めっちゃ肩こりはここも関係してるようです。
◆菱形筋(りょうけいきん)
肩甲骨と背骨の間にあるひし形の筋肉。深呼吸した時などに肩甲骨を背骨の方へ引き寄せてくれる。
紹介した筋肉は肩甲骨の動きと関係してるのがわかりますね。
腕の全体を使いたいならは肩甲骨が動けるようにしてあげれるかがカギになるのがわかります。
首を前に出していると、腕を使うために必要なこの筋肉達が「首を前に出し続けることに使われてしまう」のよね。
腕を存分に使う選択肢として、この首を前に出すは保留にしておきましょう。
解決へのカギ!動作は1つずつ順番に、目は意外と広い範囲で見えるもの。
眼だけの動きでも十分に鍵盤は見えるもんですよ。
生徒さんに次の順番で鍵盤を見て、そこから演奏してもらいました。
①正面を向いて座る
手はまだ脚の上に置いておきます。演奏する気持ちは置いといて椅子に座っただけです。
②眼だけで周りを見渡す
演奏モードに入っていると鍵盤ばかり気になるよね。ちょっとそこから離れてもらいたいので、下向きの範囲だけでなく、いろんな方向を見てもらいました。
顔は動かさないで、眼だけでキョロキョロしてみる。
意外と眼だけでも広い範囲を見渡すことができますね。
③いろんな方向を見れると知った上で眼だけで鍵盤を見る
鍵盤との距離が近すぎない限り、ある程度は鍵盤が視界に入ります。
どうしても心もとないのであれば、少しだけうなずいてもOK、さらに見えますね。
④指先から動いて鍵盤に触れる
ここでようやく手を使います。
首を前に出すことなく、腕を使える条件を作ってあげてから腕を準備してあげます。
鍵盤を見ながら腕を出す、のように動作を混ぜてやればまたクセは出やすいわけですよ。
なので、動作は1つずつ順番に声をかけながら行います。
試したプランの結果は!?
生徒さん
「腕が動かしやすくて、音量も上がりました。これだと腕が疲れにくそうです。それと視野が広くなって鍵盤の端まで見えるし安心感が増えた気がします。」
身体のデザインにそって動いてあげると動きやすくなるもので、僕がさらに嬉しいのは安心感が増えたということ。
身体を理解する、そして動きやすくなる方法がわかると、心に余裕ができるんですよね。
身体も余裕で心も余裕になれると演奏がどうなるか!?
めっちゃやりたいように自由に表現して演奏できるってことですわ!
これ以外にも効果的な方法はあると思うけど、生徒さんが今必要で役に立つこと、理解しやすい提案をすることが僕の役目です。
新しい奏法を教えるんじゃなくて、今までのやり方もOKなんです。これまで頑張って身につけてきたものやから大事にしたいことも混ざってますからね。
今までのやり方ではうまくいかない時に、「こんなやり方あるよ」と新しい選択肢としてお渡ししています。
今回もこんな風にサポートできて嬉しい限りですわ。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ほなまた!
山口裕介 USK