88のメモ

はじめに

この88のメモは、その時々に自分が感じたことの記録です。メモだけでは分かりにくいものもあると思うので、タイミングを見てYouTubeなどで一つずつ、もう少し詳しく話していくつもりです。

「緊張をなくす方法」をまとめたものではありません。

緊張しやすい自分が、本番やレッスンの現場で、体や意識に何が起きているのかを観察して、実際に試してきたことの記録です。

読み方

最初から順番に読む必要はありません。

目次を見たり、パラパラと開いたページから、今の自分に引っかかる番号だけ拾ってみてください。

01赤い色を数えたこと

ステージに立つと、いつの間にか視野がかなり狭くなっていることに気づいた。どこを見ていいか分からず、視線が止まってしまう感じがあった。そこで「会場の中にある赤い色を探す」と決めてみた。照明や機材、客席などを探しているうちに、視線が自然と動いていた。その間、周囲の情報が少しずつ入ってくる感じがして、今どこに立っているのかが分かる場面があった。

02ソワソワしている状態について

本番前になると、体が落ち着かずソワソワすることが多かった。それを止めようとすると、かえって体が固まり、動きにくくなることがあった。そこで、ソワソワしている状態を無理に抑えず、そのままにしてみた。「今はソワソワしているな」と気づくだけにしてみる。そうしていると、周りの音や人の動きが入りやすくなり、その場の状況が分かることがあった。

03聞こえてくる音を数えたこと

緊張が強くなると、自分の出している音しか聞こえなくなっていた。周囲の音がほとんど意識に入っていない感じがあった。そこで、その場で聞こえてくる音を数えてみた。空調の音や客席のざわめきなど、演奏とは関係のない音も含めて拾っていった。そうしているうちに、音が鳴っている空間を感じられることがあり、体の感覚が戻る場面があった。

04周りのメンバーの顔を見たこと

ステージに上がると、自分のことばかり考えてしまい、周りがほとんど目に入っていなかった。そんなとき、意識的にメンバーの顔を一人ずつ見てみた。すると、他の人もそれぞれ緊張している様子が見えてきた。一人で抱えている感じが少し薄れ、場にいる人数や関係が実感できることがあった。

05匂いを探したこと

緊張していると、感覚が見ることや聞くことに偏っている感じがあった。そこで、今いる場所でどんな匂いがするかを探してみた。会場の空気や衣装、周囲の匂いに意識を向ける。鼻から入ってくる情報を拾っていると、今ここに立っているという感覚がはっきりする場面があった。

06ドキドキを数えたこと

本番前、心臓が速く打っているのを感じることがあった。止めようとしても止まらないので、一定の時間で何回ドキドキしているかを数えてみた。良い悪いは判断せず、ただ数として眺める。そうしていると、ドキドキに対する向き合い方が変わることがあり、少し距離ができる感じがした。

07自分の呼吸を聞いたこと

緊張すると、呼吸が浅くなっている自覚があった。深呼吸しようとしてもうまくいかないことが多かった。そこで、吸うか吐くかを操作しようとせず、ただ自分の呼吸の音を聞いてみた。呼吸に合わせて体がどう動いているかを観察していると、呼吸の流れが変わるように感じる場面があった。

08動ける範囲を確認したこと

ステージに立つと、空間が実際より狭く感じ、体が動かせないような気がすることがあった。そこで、頭や腕、脚がどれくらい動くかを、その場で小さく確かめてみた。確認していくと、思っていたより動ける範囲があることに気づく場面があり、体の緊張感が変わることがあった。

09イスのどこに座るか決めたこと

イスに座ってもしっくりこなく、何度も座り直して落ち着かない日があった。そんなときは、あれこれ探るのをやめて「今日はここに座る」と一度決めてみた。そのままイスの感触や体が触れている部分を観察する。すると、座る場所を探し続ける感じがなくなり、落ち着くことが多かった。

10うまくいっていた時の景色を思い出したこと

本番が近づくと、失敗した場面の記憶ばかりが浮かびやすかった。そこで、うまく演奏できたときに自分が見ていた景色を思い出してみた。客席の広さや、人の表情など、視覚的な情報を辿っていく。そうすると、演奏しているときの意識に近づく感じがする場面があった。

11床を感じたこと

緊張し始めると、上半身や手元ばかりに意識が偏って、足元の感覚が抜けていることがあった。そこで、足の裏が床に触れているかを確かめてみた。体重が今どこに乗っているのか、左右で違いがあるかを観察する。床を感じていると、「立っている」という実感が戻ってくる場面があった。

12しっぽの位置を思い出したこと

立って演奏していると、無意識に膝を後ろに押し込んで脚を固めてしまう癖があった。そんなとき「しっぽがあるとしたら、どこにあるか」を想像してみた。かかとより後ろにある感じを思い出す。想像するだけで、立ち方の感覚が少し変わることがあった。

13天井の高さを確認したこと

緊張で首や背中が固まると、体が内側へ縮こまっていく感じがあった。そんなとき、会場の天井がどれくらい高いかを見上げてみた。自分の頭の上に空間があることを視覚で確認する。そうすると、姿勢の意識が広がっていくように感じる場面があった。

14体を正そうとする癖に気づいたこと

本番前、「良い姿勢でいなきゃ」と思って胸を張ってしまうことがあった。けれど、そうするほど呼吸が苦しくなる感じもあった。そこで、正そうとしている自分に気づくだけにしてみた。何も変えず、そのまま立ってみる。無理な矯正をやめると、体の使い方が楽になる場面があった。

15早く始めたくなっていたこと

緊張していると、一秒でも早く演奏を始めてこの状況を抜けたくなることがあった。待つ時間が落ち着かない。そこで、音を出す前の静けさをそのまま過ごしてみた。始まる前の時間をただ感じてみる。そうすると、焦って音を出す感じが弱まることがあった。

16ミスを探していたこと

演奏しながら、「次はどこでミスをするだろう」と、まだ起きていない失敗を探している自分に気づくことがあった。意識が先に行って、今が薄くなっている感じがした。そのことに気づいたら、今鳴っている音だけに耳を戻した。そうすると、流れが戻る場面があった。

17手元を見すぎていたこと

難しい箇所にくると、手元を凝視してしまい、視野がさらに狭くなることがあった。そこで、意識的に一度だけ視線を外してみた。手元以外の景色を入れてみる。そうすると、視覚の固まり方がゆるむ感じがして、体の動きが変わる場面があった。

18音量を決めすぎていたこと

音を出す前から「この音量で出そう」と決めすぎて、体が固定されていることがあった。そこで、決めるのをやめて、まず音を出してみた。出た音をそのまま聞く。狙いすぎないことで、音の出方が変わることがあった。

19間を埋めようとしていたこと

無音の時間が気になって、何か音を足したり、急いで次の音へ行こうとしたりすることがあった。そこで、何もない時間もそのままにしてみた。何も起きていない「間」を感じてみる。そうすると、流れの感じ方が変わる場面があった。

20今日の状態を確認したこと

「いつも通り」で演奏しようとして、体や気分の違いを無視していることがあった。昨日の自分と今日の自分は違う。そう思って、今日の状態をそのまま受け取ってみた。できることとできないことを分けてみる。そうすると、無理のかけ方が変わる場面があった。

21楽器の重さを確かめたこと

楽器を持った瞬間、いつもよりずっしり重く感じる日があった。そんな時に「いつもの感じで持とう」とすると、余計に力が入っていくこともあった。だからまず、今日の重さをそのまま確かめてみた。どこが触れていて、どこで支えているのかを観察する。そうすると、無駄な力み方が変わる場面があった。

22チューニング中の呼吸

音を合わせることに集中しすぎて、チューニング中に息が止まっていることがあった。正解を探す気持ちが強いほど、吐く息が止まりやすい。そこで、チューニングをしながら呼吸を観察してみた。「あ、今止まったな」と気づくだけにする。そうすると、呼吸の流れが戻ってくる場面があった。

23手の温度を感じたこと

緊張が高まると、指先が冷えて感覚が鈍くなることがあった。そんな時は、無理に動かす前に手の温度を感じてみた。手のひら、指先、左右の違い。冷えている場所をそのまま観察する。そうすると、触っている感覚が戻ってくる場面があった。

24音を聞く位置を変えたこと

自分の音を近くで聞きすぎて、音が詰まって感じることがあった。そこで、少し離れた位置から音を聞くつもりで、客席側の空間を意識してみた。音が「自分の周りの空間」で鳴っている事実に目を向ける。そうすると、音の受け取り方が広がる場面があった。

25次の音を考えすぎていたこと

演奏中、今の音より「次のフレーズ」を考えている時間が増えていた。そうすると、いま鳴っている音が薄く感じることがあった。先のことを考えている自分に気づいたら、今鳴っている音に耳を戻してみる。そうすると、意識が「今」に戻りやすい場面があった。

26失敗を取り戻そうとしていたこと

ミスをすると「すぐ取り戻さなきゃ」と焦って、動きも音も急ぎ足になることがあった。取り戻そうとしている自分に気づいたら、いったん諦めてそのまま次の音を出してみた。そうすると、焦りの勢いが弱まって流れが落ち着く場面があった。

27音が遅れて聞こえたこと

緊張していると、自分の音がワンテンポ遅れて聞こえるように感じることがあった。ずれている気がして焦るけれど、まずは音が聞こえるタイミングを観察してみた。実際の動きと、聞こえてくる感覚のズレをただ眺める。そうすると、リズムの捉え方が変わる場面があった。

28手首を止めていたこと

音を出す瞬間、無意識に手首を固めて止めていることがあった。コントロールしようとするほど、自由が減っていく感じ。そこで、手首が今どうなっているかを観察してみた。固めているかどうかを判断せずに見てみる。そうすると、動きの質が変わる場面があった。

29音の始まりだけを意識したこと

音の出だしから終わりまで全部をコントロールしようとして、出し方が重くなることがあった。そこで、意識を「音の始まり」の一瞬だけに絞ってみた。あとは鳴っている音を聞くだけにして、手を出さない。そうすると、音の出方が変わる場面があった。

30今日のベストを考えたこと

「いつものベストを出さなきゃ」と思うほど、プレッシャーが増えることがあった。体調も気分も毎日違う。だから、その場で「今日の自分のベストは何か」を考え直してみた。今できる範囲を、その場で決めてみる。そうすると、無理のかけ方が変わる場面があった。

31構えすぎていたこと

演奏を始める前に、まず完璧な「構え」を作らなければいけないと思い込んでいた。体を固めてから始めようとするほど、動き出しが重くなる。構えすぎている自分に気づいたら、準備が整いきる前にそのまま音を出してみた。そうすると、動き出しの感覚が変わる場面があった。

32準備音を聞いたこと

本番前の音出しを、いつも急いで済ませていた。早く本番モードに入らなければ、という焦りがあった。そこで、準備の音をそのまま聞いてみた。良い悪いを判断せず、その日の音の出方として受け取ってみる。そうすると、音との距離感が変わる場面があった。

33椅子と床の両方を感じたこと

座って演奏していると、上半身や手元ばかりに意識が集まり、足元の感覚が抜けてしまうことがあった。そこで、お尻が触れている椅子と、足が触れている床の両方を同時に感じてみた。体重がどこにどう分かれているかを観察する。そうすると、座っている感覚が変わる場面があった。

34力が入る順番に気づいたこと

緊張すると、毎回似た順番で体が固まっていることに気づいた。首から始まり、肩、背中…というように、力が入る流れがある。その順番をそのまま観察してみた。止めようとはせず、起きていることを見てみる。そうすると、早めに気づける場面があった。

35音を止めた後の体を見たこと

音を止めた瞬間、体まで一緒に止まってしまうことがあった。次の音を待つ「何もしていない時間」で、いちばん体が固まっている。音を止めた後の体を観察してみると、完全に止まっているわけではないことに気づいた。そうすると、「間」の感じ方が変わる場面があった。

36失敗を確認しすぎていたこと

ミスをした直後、頭の中で原因を探し始めていた。意識も視線も、もう過ぎたところに戻ってしまう。確認している自分に気づいたら、今鳴っている音に意識を戻してみた。無理に切り替えるくらいでちょうどいい時もあった。

37音の終わりを聞いたこと

音を出すことには意識が向いていたけれど、その音がどう消えていくかは見ていなかった。そこで、音が空間に溶けていく最後まで耳を向けてみた。鳴っている時間だけでなく、消えていく時間も含めて聞く。そうすると、音との付き合い方が変わる場面があった。

38目線の高さを変えたこと

緊張すると、いつの間にか目線が下がり、体も内側に閉じていくことがあった。そこで、今の目線の高さを確認し、少し遠くや高い位置を見るようにしてみた。無理に姿勢を変えるのではなく、見る位置だけを変えてみる。そうすると、視野の広さが変わる場面があった。

39テンポを感じ直したこと

テンポがやたら速く感じて、置いていかれそうになる日があった。そんな時、頭で合わせようとするのをやめて、今鳴っているテンポをそのまま感じ直してみた。自分の動きと音を並べて眺める。そうすると、焦り方が変わる場面があった。

40できている部分を拾ったこと

できていないところばかりを探して、自分を減点方式で見ていた。どれだけやっても足りない気がする。そこで、どんなに小さくても「今できている部分」を拾ってみた。評価ではなく、事実として眺める。そうすると、演奏中の余白が増える場面があった。

41体の一部だけを気にしすぎていたこと

緊張が高まると、指先や足首など、特定の部位の状態ばかりが気になっていた。そこを何とかしようと意識を集めるほど、体の他の部分とのつながりが薄れていく。そんなとき、体全体をひとまとまりの大きな塊として感じてみた。部分ではなく、全体として今どう在るかを眺めてみる。

42音を出す前に止まっていたこと

音を出す直前、気づかないうちに体が一度止まってしまっていることがあった。動きと音が分断され、準備と本番が切り離されている感じがする。その停止に気づいたとき、止まらずに準備の動きの延長でそのまま音を出してみた。

43聞き返さずに進んだこと

出した音が正しかったかどうか気になり、頭の中で何度も聞き返しながら演奏していた。意識は常に少し前の音に引き戻されている。聞き返している自分に気づいたら、そのまま次の音、次のフレーズへ進んでみた。

44体を小さくまとめていたこと

無意識のうちに、体を内側へまとめ、動きの幅を小さくしていることがあった。広げようとする前に、まず「今、自分は小さくなっているな」と気づくだけにしてみた。その状態のまま、演奏を続けてみる。

45音に追いつこうとしていたこと

演奏中、音に追われているような感覚になり、先回りして動こうとしていた。今鳴っている音よりも、少し先へ意識が飛んでいる。そのことに気づいたら、今まさに鳴っている自分の音をそのまま聞いてみた。

46叩いた後の感覚を残したこと

音を出した瞬間、すぐに次の動きへ移ってしまい、出した音の余韻に触れる時間がなかった。そこで、叩いた直後の手の感触や体の余韻を、ほんの一瞬だけ残してみた。次へ行く前の、わずかな時間をそのまま感じてみる。

47視線を固定していたこと

緊張すると、譜面や手元の一点を凝視し、視線が固まってしまうことがあった。視線が止まると、入ってくる情報も減っていく。視線が固定されていることに気づいたら、自然に視線が動くのをそのまま許してみた。

48音の強弱を考えすぎていたこと

あらかじめ「ここは強く」「ここは弱く」と決めすぎて、その通りに出そうとしていた。考えた強弱に体を合わせようとすると、動きが硬くなる。強弱を決めるのをやめて、出た音をそのまま聞いてみた。

49終わりを意識しすぎていたこと

曲の終わりが近づくと、意識が先に飛び、「終わる」という一点に集まってしまっていた。その分、途中の音が薄くなる。終わりを考えている自分に気づいたら、今鳴っているフレーズに意識を戻してみた。

50その場の音量を受け取ったこと

会場の響きがいつもと違うと、自分の音をどう合わせればいいのか分からなくなることがあった。そんなとき、その場に響いている音量をそのまま受け取ってみた。自分の音と空間が、今どう関係しているかを観察する。

51音の粒をそろえようとしていたこと

緊張すると、音を均一に揃えなければという意識が強くなり、指や体が機械のように固まっていた。揃えようとしている自分に気づいたら、揃える作業はいったん横に置き、出た音をそのまま聞くことだけにしてみた。揃えるかどうかを判断せず、今鳴っている音の存在を受け取る。

52手応えを求めすぎていたこと

叩いたときの手応えがないと不安になり、確かな感触を得ようとしてさらに強く叩いてしまっていた。手応えを探している自分に気づいたら、感触ではなく耳に届く音だけに意識を向けてみた。手に何が残るかより、今鳴っている音をそのまま聞く。

53姿勢を保とうとしていたこと

正しい姿勢を維持しようとして、体をどこかで固定しようとしていた。けれど体は本来、微細に動き続けている。保とうとしていることに気づいたら、固定をやめようとするより、動き続けている体をそのまま感じてみた。止めずに、今の揺れや変化を眺める。

54音の速さを体で感じ直したこと

テンポを頭で追いかけすぎて、体の動きが音に遅れているように感じることがあった。考えて合わせようとする前に、今鳴っている音の速さを体全体で感じ直してみた。動きと音の関係を、正解に寄せずにただ並べて観察する。

55視野の端を意識したこと

視線の中心だけに意識が集中し、周辺の景色が抜け落ちているような感覚になっていた。そこで、視線はそのままにして、視野の端に何があるかをぼんやり感じてみた。色や明るさ、動きの気配を拾うようにして、全体の広がりを思い出す。

56音を当てにいっていたこと

音を狙って当てようとするほど、動きがぎこちなくなっていた。狙っている自分に気づいたら、当てにいくのをやめて、自然な動きの延長で音が出るのを待つようにしてみた。正しい位置に置くより、動きが続いていることを優先する。

57叩く前に力を入れていたこと

音を出す前、構えている段階ですでに力が入っていることがあった。力みを抜こうとしても、余計に意識が増える。入っていることに気づいたら、無理に抜かず「入っているな」と分かったまま、そのまま叩いてみた。力を消すより、今の状態で動く。

58音を置く場所を決めすぎていたこと

音を出す位置やタイミングを細かく決めすぎて、その通りに体を動かそうとしていた。決めすぎていることに気づいたら、その場で鳴る音をいったんそのまま聞いてみた。決めた計画より、今起きている音を基準に戻す。

59呼吸と動きのズレに気づいたこと

動きと呼吸が別々になり、難しい箇所では息が止まっていた。ズレを直そうとすると、さらに固まることがあった。ズレていること、息が止まったことに気づいたら、合わせようとせず、ただ気づき続けてみた。呼吸を変えずに、動きを続ける。

60自分の音を信じようとしていたこと

音に自信が持てず、「信じなきゃ」と言い聞かせていた。そのつもりが、確認や評価を増やしていた。信じるか信じないかをいったん置き、今鳴っている音をそのまま受け取ってみた。判断の前に、音そのものを聞く。

61情報が足りないと思っていたこと

緊張すると、「何かが足りない」という感覚に追われていた。もっと考えなければ、もっと情報を集めなければ、という焦りが出てくる。情報を外に探している自分に気づいたら、今すでに聞こえている音や、触れている感触に意識を戻してみた。今ここにあるものを拾う。

62周りを気にしすぎていたこと

客席や共演者の視線が気になり、動きが小さくなっていた。外側に向いていた意識を、自分が今立っている場所へ戻してみた。足がどこに触れているか、床との関係を感じる。自分の位置を確認する。

63評価しながら弾いていたこと

音を出すたびに、良い・悪いの判断を即座にしていた。評価に意識を取られ、流れが細切れになっていた。評価している自分に気づいたら、そのまま評価を抱えた状態で音を出し続けてみた。判断を止めようとはしない。

64体を止めようとしていたこと

震えや動揺を隠そうとして、体を固めて動かないようにしていた。止めようとするほど、不自由さが増していた。そこで、あえて小さく、微細に動き続けることを許してみた。止まらず、動きが残る状態を選ぶ。

65先の音を考えすぎていたこと

次の難所や先の展開ばかり考え、今鳴っている音がおろそかになっていた。先を考えていることに気づいたら、その瞬間に鳴っている音だけに耳を戻してみた。今以外を扱わない。

66動きを正そうとしていたこと

正しい動きを探し、細かく修正を繰り返していた。その修正自体が、動きの妨げになっていた。正そうとしている自分に気づいたら、今の動きをそのまま続けてみた。修正を加えず、動きを切らさない。

67失敗を避けようとしていたこと

間違えないようにと守りに入り、表現も動きも小さくなっていた。避けようとしている自分を認めた上で、音を止めずに先へ進むことを選んだ。安全より、継続を優先する。

68緊張を消そうとしていたこと

緊張してはいけないと思い、それを消すことに力を使っていた。消そうとするほど、緊張への意識が強まっていた。緊張したままで演奏してみる。緊張がある状態を、そのまま含める。

69一人で抱え込んでいたこと

すべて自分でコントロールしようとして、体が重くなっていた。音の響きや会場の空間に任せるような感覚を思い出してみた。自分だけで完結させない。

70今に戻るだけで足りたこと

特別な方法や解決策を探し続けていた。けれど、迷ったときに今見えているもの、聞こえているもの、触れているものに戻る。それだけで十分なことがあると分かった。今を扱う。

71出したい音より体を気にしていたこと

腕の角度や姿勢など、体の形ばかりを気にしていた。何とかしようとするほど、音が後回しになっていることに気づいた。本来出したかった音を先に思い浮かべてみる。音を先に置き、体はそのままにする。

72予測で演奏していたこと

「次はこうなるはずだ」という予測だけで演奏していた。実際に起きている音や響きへの反応が遅れていた。予測している自分に気づき、今この瞬間に鳴っている音をそのまま受け取ってみた。

73癖を直そうとしていたこと

自分の癖を悪いものだと決めつけ、必死に直そうとしていた。意識すればするほど、その癖が強まっていることに気づいた。直そうとせず、「今出ているな」と気づくだけにしてみた。

74反応が速すぎたこと

刺激があるたびに、反射的にすぐ動いていた。間がなく、演奏が急かされている感覚があった。何かが起きた時、すぐ反応せず、一瞬だけ待ってから動いてみた。

75始めるまでが速すぎたこと

準備が整う前に、逃げるように演奏を始めていた。最初の音が落ち着かない理由がそこにあった。あえて数秒待ち、何もせずにからだの状態を感じてから音を出してみた。

76その場にいなかったこと

体はステージにあるのに、意識は終わった後のことや別の場面に飛んでいた。自分が今ここにいないことに気づき、目に見えるものを一つずつ確認してみた。

77今日の状態を無視していたこと

昨日の感覚や理想の状態を基準に、今日の自分を無視していた。無理をしていることに気づき、今の体調や気分をそのまま受け取ってみた。今日できることを前提にする。

78楽器を道具として扱いすぎていたこと

楽器を操作する対象として捉え、体と切り離して考えていた。楽器に触れている部分を感じ、体の延長として扱ってみた。分けずに一緒にある感覚を探る。

79心を閉じて体も閉じていたこと

失敗を避けようと心を守ると、体も同時に固まっていた。心を変えようとせず、体だけ少し開いてみる。視野や胸のあたりを物理的に広げてみた。

80触れている範囲が狭かったこと

指先や一点だけで楽器に触れている感覚があった。触れている範囲を点ではなく、面として感じてみた。接触している広がりに意識を向ける。

81うまくいくかは踏み出してから分かること

演奏前から結果を予測して、「うまくいくか」を判断しようとしていた。判断している自分に気づいたら、いったん保留にして、分からないまま一歩踏み出してみた。出した音を聞いてから、次を考える。

82挨拶の声が小さくなっていたこと

本番前、無意識に声を潜めていて、体も一緒に縮こまっていた。小さくなっていることに気づいたら、普段通りの声量で挨拶してみた。声を出してみるだけ。

83ミスしそうな瞬間の顔

ミスを避けようとしている時、顔が強張って表情が固まっていた。表情に気づいたら、口角を少しだけ上げてみた。大きく笑うのではなく、ほんの少し緩める。

84大丈夫と言い聞かせていたこと

不安を打ち消そうとして「大丈夫」と言い聞かせていたが、体は納得していなかった。言葉で押さえ込むのをやめて、「今、何ならできるか」を事実として確認してみた。できることだけを数える。

85実況中継をしてみたこと

頭が真っ白になり、何をすべきか分からなくなった。そんな時、心の中で実況中継をしてみた。「今ここに立っている」「右手にスティックがある」など、起きていることだけを言葉にする。

86動きが速すぎたこと

焦って所作が速くなり、手順が飛んでミスにつながっていた。速さに気づいたら、意識的に動作をゆっくりにしてみた。速くしようとする癖を、いったん落とす。

87自分より上手にできるのは自分だけだったこと

人と比べて正解を探し、「あの人みたいに」をやっていた。比べている自分に気づいたら、今日の自分を使う役割に戻る。今の自分でやる、に切り替える。

88動かすものと止まっているもの

体の全部を一斉に動かそうとして、エネルギーが散っていた。今どこが動いていて、どこを休ませられるかを確認してみた。動かす部分と、止めておける部分を分ける。

追記

緊張は、その本番を大切に思っている証拠です。どこかのタイミングでこのメモが役に立てるなら嬉しい限りです。


アレクサンダーテクニーク指導者
山口裕介USK